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「精神の障害の認定」について

近年、障害年金受給者の半分は、精神障害や知的障害の方です。しかし、精神の障害をお持ちの方にとって障害年金の請求は難しいと言われます。実際、受給要件は満たしていても、受給に至らない方は多くいらっしゃいます。

しかし、精神疾患の傷病を有し、就労することに制限を受ける方、または全く就労することが出来ないという方の収入がなくなる不安はご家族も含めての重大な問題です。

そのため精神疾患の方にとっても、多くの他の傷病と同じように、障害年金は一定の収入を継続して受けることが出来れば、生活困難な状況を防止し、未来への希望をつなぐことができると思います。

精神病

1.精神の障害の認定基準の歴史について

基準
 精神疾患に関する障害年金請求を行う時に、欠かすことが出来ない重要な施行通達として、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月1日施行)があります。
 このガイドラインが出る以前は、精神障害についての客観的な検査数値、所見というものが確立されておらず、障害年金の認定要領の記載も抽象的であったために認定医の主観で判断が異なるなどの状況でした。
 そのため、このガイドラインによって、判定の基準や手順を明確になり、かなり客観性が改善されています。現在は、不支給の場合には、その理由がガイドラインに沿った形での説明がなされておいます。そのため、審査請求(不服申し立て)をする場合の参考になります。

2.精神の障害の認定の難しい原因について

健康診断チェック
 障害年金が受給できる傷病の中で比較してみますと、肢体の障害の場合には関節の可動域範囲、腎臓や心臓など内臓疾患による障害の場合には血液検査数値あるいは心電図等の検査数値があり、聴覚疾患では聴力レベル値が認定基準としてあります。

 一方、精神の障害は明確な検査値ではなく、「日常生活で自分の用事を行えるか」が等級を判定する際の基準となります。
 さらに、「認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断すると共に、その原因及び経過を考慮する」と記載されています。
 このことは精神の障害用の(医師の)診断書の裏面において、その大半が「日常生活状況」を記載判定する項目で占められていることからも明らかです。

 つまりは、精神の障害を認定する際には、「認定側(年金機構)が請求者の日常生活状況をどのようにして判断をするのか」が重要で、その点をしっかり押さえて請求するがポイントになります。

3.精神の障害年金請求にするときのポイント

POINT
 障害年金の認定は、書類審査のみです。そして、その書類審査にあたって、一番重視されるのは「(医師の)診断書」です。

 また、「(請求者が記載する)病歴・就労状況等申立書」については、「(医師の)診断書」との整合性が求められます。整合性を保つためには、何よりも医師が患者の状況を正確に把握し、それが診断書に記載されていることが重要になります。

4.精神の障害の区分

 障害認定基準の第3第1章第8節で、精神の障害は次の6つに区分されています。

①統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
②気分(感情)障害
③症状性を含む器質性精神障害
④てんかん
⑤知的障害
⑥発達障害

 その各々について、認定要領をお話します。

①統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害

統合失調症
 残遺状態または病状があることによる日常生活の制限の程度がポイントです。
 残遺症状とは「急性期の症状は消滅あるいは軽減しているが未だ症状が有る状態」のことです。
 診断書では統合失調症等残遺状態として 自閉、感情鈍麻、意欲の減退 などが例として示されています。

②気分(感情)障害

イライラする人
「持続したり頻繁に繰り返したりする気分、意欲、行動の障害及び思考障害の病相による障害」が例示されています。
 症状が繰り返すことに着目して「現症のみによって認定することは不十分であり、症状の経過およびそれによる日常生活活動等の状態を十分考慮する」こととされていますので、長期間にわたっての障害状態の把握も重要です。

※①と②の共通注意点

注意点
 ①と②は精神の障害の中でも、最も該当者が多く、またよく知られた傷病区分です。
そして、①と②については共通して、次の2つの注意が必要です。

・「人格障害(パーソナリティ障害)は、原則として障害認定の対象にはならない」とされていますので、注意が必要です。もし、人格障害と診断された場合には、これ以外の傷病に該当していないかを探る必要があります。

・「神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分(感情)障害に準じて取り扱う」とされていますので、注意が必要です。
(このことは、神経症に対する「精神医学会の認識」とされています。)

③症状性を含む器質性精神障害

疲れた人
 これは中枢神経等の器質障害を原因として起こる精神障害が対象です。
 いわゆる中枢神経等に器質障害(脳の病気、損傷や脳以外の身体疾患から脳機能が二次的に障害されて起こる精神障害)が発生すると、身体機能と精神機能の両面に障害が起こることがあります。
 身体機能に障害が起これば「肢体の障害」になるため、この場合には、精神の障害と肢体の障害の双方の認定基準に照らし合わせてみる必要があります。
 また、アルコール、薬物などの使用による障害についても、この要領が適用されます。ただし、禁止薬物の使用が原因となる障害の場合には、給付制限によって給付がされないことがあります。大麻や有機溶剤の吸引等が障害の原因となる場合には、この点を事前に確認する必要があります。
 (国民年金法第69条、70条 および厚生年金法第73条、第73条の2参照)

④てんかん

てんかん
てんかんは、発作の頻度と諸症状による日常生活の制限の両方を考慮して障害等級を認定されます。

発作の臨床症状は多彩となりますが、認定要領においては

A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作
C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作

の4タイプに分けられます。

障害の程度は発作程度の重い「AまたはB」と軽度の「C又はD」に分けられ、その回数によって障害状態を例示されています。

具体的に
・1級 「AまたはBの発作」が月に1回以上
・2級 「AまたはBの発作」が年に2回以上、若しくは「CまたはDの発作」が月に1回以上
・3級 「AまたはBの発作」が年に2回未満、若しくは「CまたはDの発作が月に1回未満

このような発作の状態タイプというのは、医師には正確に伝えることも難しいことが多いと思われます。そのため、ご家族など付き添いの方が日々の発作の状況などを記録し、正確に医師に伝え、医師にきちんと認識してもらうことが大切になります。

 また、てんかんについては認定要領において「抗てんかん薬の服用や、外科的治療により抑制される場合にあっては、原則として認定の対象にならない」とされていることに注意が必要です。
 これは重度の発作を起こす患者さんであっても抗てんかん薬の服用で発作が抑えられている場合には、障害年金を請求しても認められないということを示しています。
 このことからも発作の重症度や頻度だけでなく、「日常生活動作がどの程度損なわれ、そのためにどのような社会的不利益を被っているのかという社会的活動能力の損減を重視して認定を行うとされます。他の障害と同様に、障害年金請求のために、診断書を作成される医師に、日常生活における状況を正確に伝えることが重要です。

⑤知的障害

脳
 知的障害は生来の障害であるために、障害年金の請求にあたっては“初診日の証明”は不要です。実際の初診日が20歳以後でも、すべて「出生日が初診日」となります。
 また、障害年金請求にあたっては「20歳前障害」として扱われますから、「障害基礎年金(国民年金)の給付」になります。

 知的障害については「知能指数のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する」とされています。
「この場合、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事しているものについては、その療養状況を考慮すると共に、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分に確認したうえで日常生活能力を判断すること」とされています。
 そのため、診断書や病歴・就労状況等申立書などの提出書類に、仕事現場の実態をどれくらい記載できるか重要です。
 参考までに、就労継続支援A型事業所では雇用契約による一般就労とされますが、同B型事業所は雇用契約の扱いとはなりません。

⑥発達障害

発達障害
 「発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものをいう」とされています。

 その要領は次のようにされています。
・発達障害については、たとえ知能指数が高くても社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことが出来ないために日常生活に著しい制限を受けることに着目して認定を行う。また、発達障害とその他認定の対象となる精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する。

・発達障害は、通常低年齢で発症する疾患であるが、知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする。
(知的障害の場合には、初診日が20歳以降であっても、すべて20歳前の初診日とされることと、大きく異なります、以前のブログにも書いていますので、下にURLを貼りますので、参考にしてください)

・知的障害と同様に発達障害も知能指数のみを注視するわけでなく、日常生活における様々な場面での援助の必要性を勘案したうえで総合的に判断するとされ、
「その日常生活能力の判定にあたり、身体的機能および精神的機能を考慮の上、社会的な適応性の程度によって判断するように努める。」とされています。

・就労支援施設や小規模作業所などに参加するものに限らず、雇用契約により一般就労をしている者であっても、援助や配慮のもとで労働に従事している。したがって、労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮すると共に、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること。

以上から発達障害の障害年金請求にあたっては、就労との関係は等級認定に大きく影響を与えます。そのため、仕事の与えられ方や実態等について(医師の)診断書への反映や病歴・就労状況等申立書の書き方に工夫が重要になります。

発達障害については、以前のブログも参考にしてください。下にリンクを貼ります。

5.まとめ

まとめ
 最初にお話しましたように、近年、障害年金受給者の半分が精神疾病の方です。でも、他の障害と違って、検査値などの数値で測ることができないため、不支給となる方が多数いらっしゃいます。そのため、提出する書面の書き方を熟知していることが受給へ繋がると思います。
 障害年金のプロである社労士に一度、ご相談されることをお勧めします。
 初回無料相談をしていますので、お気軽にご連絡ください。お待ちしています。

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