前回、「傷病手当金」について簡単にお話しました。
今回は、「傷病手当金」という制度について詳しくお話します。
1.傷病手当金が受けられる場合は
傷病手当金は、被保険者が病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あり、さらに、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。
ただし、休んだ期間について会社から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合には、傷病手当金は支給されません。
2.支給される金額は
1日当たりの支給金額を次のように計算します。
【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)
※支給開始日とは、一番初めに傷病手当金が支給された日のことです。
※支給開始日以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次のA、Bの低い額を使用して計算します。
A. 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
B. 標準報酬月額の平均値: 30万円
※支給開始日が平成31年4月1日以降の方で、当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額
3.傷病手当金の調整
AからEにあてはまる場合、傷病手当金の支給額の一部または全部が調整されます。
A.給与の支払いがあった場合
休んだ期間について、給与の支払いがある場合、傷病手当金は支給されません。
ただし、休んだ期間についての給与の支払いがあってもその給与の日額が、傷病手当金の日額より少ない場合、傷病手当金と給与の差額が支給されます。
B.障害厚生年金または障害手当金を受けている場合
同一の傷病等による厚生年金保険の障害厚生年金または障害手当金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。
ただし、障害厚生年金の額(同一支給事由の障害基礎年金が支給されるときはその合算額)の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
また、障害手当金の場合は、傷病手当金の額の合計額が障害手当金の額に達することとなる日までの間、傷病手当金は支給されません。
C.老齢退職年金を受けている場合
資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が、老齢退職年金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。
ただし、老齢退職年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
D.労災保険から休業補償給付を受けていた(受けている)場合
過去に労災保険から休業補償給付を受けていて、休業補償給付と同一の病気やけがのために労務不能となった場合には、傷病手当金は支給されません。
また、業務外の理由による病気やけがのために労務不能となった場合でも、別の原因で労災保険から休業補償給付を受けている期間中は、傷病手当金は支給されません。
ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。
E. 出産手当金を同時に受けられるとき
傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多ければ、その差額を支給することとなります。
※なお、傷病手当金を受け取った後に、A、B、C、D、Eに該当していることが判明した場合は、傷病手当金をお返しいただくことになります。
4.支給される期間
傷病手当金は、病気やけがで休んだ期間のうち、最初の3日を除き(これを「待期」といいます。)、4日目から支給されます。
その支給期間は、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して 1年6ヵ月に変わりました。
ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合は、いままでどおり支給を開始した日から最長1年6ヵ月までの期間になります。
詳しくは下の図(画像)を参考にしてください。
今回のキーポイントは、
障害年金との関係性について、一言でいうと、「傷病手当金は、障害年金など他制度から二重払いされない(調整される)」制度になっているということです。
次回は、傷病手当金と障害年金の関係性についてお話します。