今回から4回に分けて、「精神の障害の認定」についてお話します。
近年、障害年金受給者の半分は、精神障害や知的障害の方です。しかし、精神の障害をお持ちの方にとって障害年金の請求は難しいと言われます。実際、受給要件は満たしていても、受給に至らない方は多くいらっしゃいます。
しかし、精神疾患の傷病を有し、就労することに制限を受ける方、または全く就労することが出来ないという方の収入がなくなる不安はご家族も含めての重大な問題です。
そのため精神疾患の方にとっても、多くの他の傷病と同じように、障害年金は一定の収入を継続して受けることが出来れば、生活困難な状況を防止し、未来への希望をつなぐことができると思います。
■精神の障害の認定基準の歴史について
精神疾患に関する障害年金請求を行う時に、欠かすことが出来ない重要な施行通達として、「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月1日施行)があります。
このガイドラインが出る以前は、精神障害についての客観的な検査数値、所見というものが確立されておらず、障害年金の認定要領の記載も抽象的であったために認定医の主観で判断が異なるなどの状況でした。
そのため、このガイドラインによって、判定の基準や手順を明確になり、かなり客観性が改善されています。現在は、不支給の場合には、その理由がガイドラインに沿った形での説明がなされておいます。そのため、審査請求(不服申し立て)をする場合の参考になります。
■精神の障害の認定の難しい原因について
障害年金が受給できる傷病の中で比較してみますと、
肢体の障害の場合には関節の可動域範囲、腎臓や心臓など内臓疾患による障害の場合には血液検査数値あるいは心電図等の検査数値があり、聴覚疾患では聴力レベル値が認定基準としてあります。
一方、精神の障害は明確な検査値ではなく、「日常生活で自分の用事を行えるか」が等級を判定する際の基準となります。
さらに、「認定に当たっては具体的な日常生活状況等の生活上の困難を判断すると共に、その原因及び経過を考慮する」と記載されています。
このことは精神の障害用の(医師の)診断書の裏面において、その大半が「日常生活状況」を記載判定する項目で占められていることからも明らかです。つまりは、精神の障害を認定する際には、「認定側(年金機構)が請求者の日常生活状況をどのようにして判断をするのか」が重要で、その点をしっかり押さえて請求するがポイントになります。
■精神の障害年金請求にするときのポイント
障害年金の認定は、書類審査のみです。そして、その書類審査にあたって、一番重視されるのは「(医師の)診断書」です。
また、「(請求者が記載する)病歴・就労状況等申立書」については、「(医師の)診断書」との整合性が求められます。整合性を保つためには、何よりも医師が患者の状況を正確に把握し、それが診断書に記載されていることが重要になります。
今回は、精神の障害が他の障害に比べ、認定の客観性の難しさについてお話しました。
次回は、主な精神の疾病について、認定要領について、詳細をお話します。