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「傷病手当金」と「障害年金」について

1.「傷病手当金」とは

傷病手当金
「傷病手当金」という健康保険法における用語を聞いたことがありますか?健康保険の制度である「傷病手当金」についてお話しします。
「傷病手当金」とは、
怪我、病気などで仕事ができない状態になり、会社を休み、会社から十分な報酬が支給されないときに、会社の健康保険組合から被保険者やその家族の生活を保障するための制度です。
なお、任意継続被保険者の方は、傷病手当金は支給されません。
(健康保険法第104条による継続給付の要件を満たしている者は除く。)

傷病手当金 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 (kyoukaikenpo.or.jp)

2.傷病手当金と障害年金の関係性について

緑に球体
会社等で就労されている方(健康保険の被保険者)が傷病手当金を受給されていて、さらに障害年金の受給をお考えになる場合には、傷病手当金と障害年金との関係性について知っておくことが大切です。

2-1.傷病手当金が受けられる場合

休職
傷病手当金は、被保険者が病気やけがのために働くことができず、会社を休んだ日が連続して3日間あり、さらに、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。
ただし、休んだ期間について会社から傷病手当金の額より多い報酬額の支給を受けた場合には、傷病手当金は支給されません。

2-2.支給される金額

計算
1日当たりの支給金額を次のように計算します。

【支給開始日の以前12ヵ月間の各標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)
※支給開始日とは、一番初めに傷病手当金が支給された日のことです。

※支給開始日以前の期間が12ヵ月に満たない場合は、次のA、Bの低い額を使用して計算します。

A. 支給開始日の属する月以前の継続した各月の標準報酬月額の平均額
B. 標準報酬月額の平均値: 30万円
※支給開始日が平成31年4月1日以降の方で、当該年度の前年度9月30日における全被保険者の同月の標準報酬月額を平均した額

2-3.傷病手当金の調整

計算
AからEにあてはまる場合、傷病手当金の支給額の一部または全部が調整されます。

2-3-A.給与の支払いがあった場合

休んだ期間について、給与の支払いがある場合、傷病手当金は支給されません。
ただし、休んだ期間についての給与の支払いがあってもその給与の日額が、傷病手当金の日額より少ない場合、傷病手当金と給与の差額が支給されます。

2-3-B.障害厚生年金または障害手当金を受けている場合

同一の傷病等による厚生年金保険の障害厚生年金または障害手当金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金の額(同一支給事由の障害基礎年金が支給されるときはその合算額)の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。
また、障害手当金の場合は、傷病手当金の額の合計額が障害手当金の額に達することとなる日までの間、傷病手当金は支給されません。

2-3-C.老齢退職年金を受けている場合

資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が、老齢退職年金を受けている場合、傷病手当金は支給されません。ただし、老齢退職年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。

2-3-D.労災保険から休業補償給付を受けていた(受けている)場合

過去に労災保険から休業補償給付を受けていて、休業補償給付と同一の病気やけがのために労務不能となった場合には、傷病手当金は支給されません。
また、業務外の理由による病気やけがのために労務不能となった場合でも、別の原因で労災保険から休業補償給付を受けている期間中は、傷病手当金は支給されません。ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額が支給されます。

2-3-E. 出産手当金を同時に受けられる場合

傷病手当金の額が出産手当金の額よりも多ければ、その差額を支給することとなります。

※なお、傷病手当金を受け取った後に、A、B、C、D、Eに該当していることが判明した場合は、傷病手当金をお返しいただくことになります。

2-4.支給される期間

傷病手当金の待機と支給期間
上の図を参考にして、お読みください。

傷病手当金は、病気やけがで休んだ期間のうち、最初の3日を除き(これを「待期」といいます。)、4日目から支給されます。
その支給期間は、令和4年1月1日より、支給を開始した日から通算して 1年6ヵ月に変わりました。
ただし、支給を開始した日が令和2年7月1日以前の場合は、いままでどおり支給を開始した日から最長1年6ヵ月までの期間になります。
障害年金との関係性について、一言でいうと、「傷病手当金は、障害年金など他制度から二重払いされない(調整される)」制度になっているということです。

3.傷病手当金を受給中に会社を退職したら、どうなるのか?

退職
会社に在籍しているときに、傷病手当金を受給して休職中の方が、その会社を退職した場合には、
退職の前日までに、その会社で1年間勤めていたら(健康保険の被保険者期間が1年以上あれば)、退職後も引き続き傷病手当金を受給できます。

この場合、注意が必要なことは傷病手当の支給期間です。
支給開始日から通算1年6か月で支給終了となります。(詳しくは前回のブログを参考にしてください。)
すなわち1年6か月を経過すると、働けない状態が続いても、傷病手当金は支給されなくなります。
また退職後に加入する市町村の健康保険(国民健康保険)からには、傷病手当金は支給されません。(傷病手当金という制度がありません。)

このことからも、会社員などお勤めをされている方で障害年金の受給の可能性のある方は、傷病手当金を支給中に障害年金の請求に向けて、準備されることをお勧めします。

4.最後に
~傷病手当金から障害年金へつなぐ未来を~

手をつなぐ
現在、傷病手当金を受給されている方は、次に障害年金請求を考えて頂きたいと思います。
繰り返し説明しましたが、傷病手当金の支給期間は1年6か月です。
(法改正により令和4年4月1日からは支給期間は通算して1年6か月)
一方、障害年金は障害認定日(初診日から1年6か月)を迎えれば、請求が可能となります。
つまり、傷病手当金の支給終了頃に、障害年金の障害認定日が到来することになります。

傷病のために労務不能で会社を休職中の(傷病手当金を受けている)方は、障害認定日以降に傷病手当金を受けながら障害年金の請求を行う、ということも可能です。

障害年金は、請求して支給決定となった場合でも実際に口座入金されるまで3~4カ月は時間が掛かります。
そのため、傷病手当金の受給期間が終了してから請求を行うと暫くは収入がない状態が続くことになりますから、「障害認定日」を迎えるタイミングで早めに請求手続きを行い、傷病手当金から障害年金への空白期間を少なくすることをお勧めいたします。

傷病手当金は会社等にお勤めの方が私傷病で働けない場合に給料の代わりとして健康保険から受けられるもので、給料の約3分の2の額とされています。
なお、市町村国保(自営業者、フリーターなどが加入する国民健康保険)には傷病手当金は有りません。

傷病手当金と同じ病気や怪我で障害厚生年金・障害手当金を受給出来る場合には、傷病手当金は支給されません。
通常は先に傷病手当金を受給されるケースが多いと思われます。これは金額が障害年金よりも額が大きく、手続きも簡単であるためです。また「障害認定日を迎えていないと障害年金の請求自体が出来ない」というのもその理由のひとつです。

傷病手当金の支給基準は労務不能であることで、医師の証明があれば足りるというシンプルな仕組みです。その支給金額は自分が負担していた健康保険料に応じて計算された額です。しかし、支給期間は最大でも1年6か月という制限があります。
一方で障害年金は、障害の状態により等級が定められ(障害等級表)、該当する場合に受け取ることが出来ます。傷病手当金の手続きとは異なり、請求用の診断書が必要となり、初診日要件、保険料納付要件などの必要となりその他にも必要書類作成や用意が求められるなど時間や手間も掛かりますし、年金事務所に何度も足を運ぶことにもなります。しかし、障害年金は、更新手続きはありますが、その傷病の状態が続いている限りは、期限はありません。

現在傷病手当金を受給している方で、障害年金をお考えの場合は、傷病手当金の受給期間がまだ残っているうちに請求されることが望ましいと考えます。
早目に請求し、受給出来れば収入面でも安心です。この時期のタイミングですが傷病手当金残り期間が「6カ月」程度になった時点から準備に入られたら無理が無いと思います。

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