会社員の方が私傷病のために起こった病気や怪我での治療でお仕事を長期にわたって休む場合、「傷病休職」「復職」について、よくご相談を受けることがあります。今回は、その注意点を詳しくお話ししようと思います。
1.休職した原因による違い
会社員の方が私傷病による病気や怪我での治療で長期にわたって休む場合(休職)があります。
休職の原因が業務上や通勤上の災害であれば、労災保険からの療養の給付(通院などの費用負担)や休業の給付(会社からの給料に代わるもの)等が支給されます。
一方、原因が私傷病災害であれば、健康保険からの傷病手当金の支給を受けることが多いと思われます。
なお、就労の形態には大きく正社員、非正規社員(有期雇用契約、パートタイマー、アルバイトなど)がありますがそれらを念頭に置きながら解説していきます。
休職の原因が業務上や通勤上の災害であれば、労災保険からの療養の給付(通院などの費用負担)や休業の給付(会社からの給料に代わるもの)等が支給されます。
一方、原因が私傷病災害であれば、健康保険からの傷病手当金の支給を受けることが多いと思われます。
なお、就労の形態には大きく正社員、非正規社員(有期雇用契約、パートタイマー、アルバイトなど)がありますがそれらを念頭に置きながら解説していきます。
2.傷病手当金を受ける場合
・傷病手当金は、被保険者が病気や怪我で会社を休んだ時に被保険者(会社員など)とその家族の生活を保障するため事業主から十分な報酬を受けられない場合に支給されます。
・現在、傷病手当金の支給される期間は支給開始から【通算して】1年6か月とされています。(令和4年1月1日改正、「支給開始日」が令和2年7月1日以前の場合は支給開始日から1年6か月とされ、途中に出勤して給与支払いがあった期間も含まれていました。)
・この制度については、協会けんぽや各健保組合にて支給条件(連続3日の待機期間など)や額の計算(標準報酬月額の平均値の算出など)、被保険者資格の喪失後の継続給付(1年以上の被保険者期間を要するなど)、老齢年金や障害年金など他制度との調整などがあります。他制度と調整ついては下のブログで詳しく説明していますので、参考にしてください。
・現在、傷病手当金の支給される期間は支給開始から【通算して】1年6か月とされています。(令和4年1月1日改正、「支給開始日」が令和2年7月1日以前の場合は支給開始日から1年6か月とされ、途中に出勤して給与支払いがあった期間も含まれていました。)
・この制度については、協会けんぽや各健保組合にて支給条件(連続3日の待機期間など)や額の計算(標準報酬月額の平均値の算出など)、被保険者資格の喪失後の継続給付(1年以上の被保険者期間を要するなど)、老齢年金や障害年金など他制度との調整などがあります。他制度と調整ついては下のブログで詳しく説明していますので、参考にしてください。
3.傷病休職による休職期間の位置づけ
・会社で私傷病休職の規定を就業規則等で設けている場合がありますが、これは法律の規定によって作られたものではなく、労働契約上の特約という位置づけになります。即ち会社の判断で私傷病により出勤出来ない場合の休職規定を設けていなくても法違反とはされません。
・休職自体は会社員などがその雇用契約を維持(地位や身分を保障)されたままで一定期間勤務を休みこと(労働を免除される)をいいます。その期間は会社により様々ですが、一般的には3か月から長くても3年程度とされています。休職までの雇用期間に応じて、その期間を定めている会社も多くみられます。
・休職は就業規則で定めるのが一般的で、従業員の判断で休職するのではありません。あくまで会社が就業規則に基づいて判断、休職命令を発して労働を免除する流れとなります。
・休職期間中は無給、その間の健康保険組合からの傷病手当金(上記2)の受給が考えられます。
・社会保険料等の本人負担分の支払い義務は継続し、毎月給料から控除されているが給料が発生しないため別途支払いを求められます。傷病手当金はおおむね月給の3分の2相当になりますが、社会保険料はそのままの額のため、負担割合は大きくなります。
・休職自体は会社員などがその雇用契約を維持(地位や身分を保障)されたままで一定期間勤務を休みこと(労働を免除される)をいいます。その期間は会社により様々ですが、一般的には3か月から長くても3年程度とされています。休職までの雇用期間に応じて、その期間を定めている会社も多くみられます。
・休職は就業規則で定めるのが一般的で、従業員の判断で休職するのではありません。あくまで会社が就業規則に基づいて判断、休職命令を発して労働を免除する流れとなります。
・休職期間中は無給、その間の健康保険組合からの傷病手当金(上記2)の受給が考えられます。
・社会保険料等の本人負担分の支払い義務は継続し、毎月給料から控除されているが給料が発生しないため別途支払いを求められます。傷病手当金はおおむね月給の3分の2相当になりますが、社会保険料はそのままの額のため、負担割合は大きくなります。
4.復職に向けて治癒の判断
・復職には、「治癒した」と判断が必要ですが、原則は従前の業務を通常の程度に行える健康状態に復したときと考えられます。
・使用者が治癒したと判断するためにはその治癒の証明責任は労働者にあります。そのために労働者の側から「従前とおりに業務を通常程度行える」という資料を提供することになります。労働者は自らのプライバシー保護を主張して主治医への問合せを拒否する、診断書の内容確認を拒否するなどがあれば使用者は治癒の判断が出来ないことになります。
この場合に労働者が受ける不利益(復職を認めてもらえないなど)があってもそれは相当であるとされてしまいます。
・治癒の解釈は基本的には当事者間では、使用者が判断権者となります。但し、治癒の判断を巡っての紛争となる場合には、司法による判断になります。
・使用者が治癒したと判断するためにはその治癒の証明責任は労働者にあります。そのために労働者の側から「従前とおりに業務を通常程度行える」という資料を提供することになります。労働者は自らのプライバシー保護を主張して主治医への問合せを拒否する、診断書の内容確認を拒否するなどがあれば使用者は治癒の判断が出来ないことになります。
この場合に労働者が受ける不利益(復職を認めてもらえないなど)があってもそれは相当であるとされてしまいます。
・治癒の解釈は基本的には当事者間では、使用者が判断権者となります。但し、治癒の判断を巡っての紛争となる場合には、司法による判断になります。
5.治癒について主治医(労働者側)と産業医(会社側)の判断が異なる場合
・復職を求める労働者が主治医の診断書を提出すると、会社の産業医が復職可否の判断する場合があります。
この時に主治医と産業医の判断が異なった場合には会社の実情を掌握している産業医の判断が尊重されることになります。(会社としての判断を尊重)
但し、精神疾患を起因とする傷病の場合には一定の長期にわたり継続観察の必要もあるため、会社が産業医判断であったとしても主治医判断を尊重とする場合もあります。
この時に主治医と産業医の判断が異なった場合には会社の実情を掌握している産業医の判断が尊重されることになります。(会社としての判断を尊重)
但し、精神疾患を起因とする傷病の場合には一定の長期にわたり継続観察の必要もあるため、会社が産業医判断であったとしても主治医判断を尊重とする場合もあります。
6.復職でのポイント
復職の判断権限は、安全配慮義務を担い人事権を有する使用者(会社)にあるということです。
復職命令は(休職命令も同じですが)それが会社の人事権の行使であり会社の専権事項であるという点が重要です。その行使のためには主治医の診断書があっても、産業医の判断意見が重要な判断材料(資料)となります。
復職命令は(休職命令も同じですが)それが会社の人事権の行使であり会社の専権事項であるという点が重要です。その行使のためには主治医の診断書があっても、産業医の判断意見が重要な判断材料(資料)となります。
6-1.復職判断までの一般的な流れ
① 労働者の復職希望
② 主治医による復職判断(診断書提出など)
③ 会社産業医による判断意見(③の設定有無は会社により異なります)
④ 会社の復職可否の判断
② 主治医による復職判断(診断書提出など)
③ 会社産業医による判断意見(③の設定有無は会社により異なります)
④ 会社の復職可否の判断
6-2.休職期間満了後の解雇、自然退職
・休職の事由が消滅せず(傷病が快復しない)、定められた休職期間が満了した場合の扱いが解雇となるのか自然(または自動)退職になるかは就業規則等の定めによります。
・解雇とされていれば、労働基準法上の解雇の予告(労基法第20条)が必要となります。
・休職期間満了までに休職事由が消滅しなければ、当然に雇用契約が終了するとされるのが一般的な解釈です。これは他に例えるならば、定年退職の場合には定めた年齢に達すればその該当した事実により労働契約が終了するのと同様です。この場合は当然ながら「解雇には当たらず」、「解雇の予告も不要」となります。(就業規則での確認が重要です)
・解雇とされていれば、労働基準法上の解雇の予告(労基法第20条)が必要となります。
・休職期間満了までに休職事由が消滅しなければ、当然に雇用契約が終了するとされるのが一般的な解釈です。これは他に例えるならば、定年退職の場合には定めた年齢に達すればその該当した事実により労働契約が終了するのと同様です。この場合は当然ながら「解雇には当たらず」、「解雇の予告も不要」となります。(就業規則での確認が重要です)
6-3.非正規雇用者の復職
・有期雇用労働契約の場合には、その契約期間が事前に定められ、就業規則との整合性確認が必要になるでしょう。通常はその就業規則に沿うことになりますが、休職中に雇用期間満了となり、それにより退職になる旨の定めがあれば、その時点で「雇止め」が可能となります。
逆に雇用期間の継続延長の可否など明確な定めがなければ、復職にむけての主治医の診断や産業医による判断等を経て使用者に復職を求めることも考えられます。
・契約社員、パート、アルバイト等の名称の如何に関わらず非正規社員の多くは短期間での有期雇用期間を繰り返す場合が多いです。
その場合でも、休職期間中も雇用契約自体は継続していますので、無期転換ルールに従い、通算雇用期間が5年超の時点で無期雇用の申し込みを行うことが考えられます。これは必ず休職事由消滅後に復職を保障するものでは有りませんが、復職前に雇止めとされることを否定することになります。
逆に雇用期間の継続延長の可否など明確な定めがなければ、復職にむけての主治医の診断や産業医による判断等を経て使用者に復職を求めることも考えられます。
・契約社員、パート、アルバイト等の名称の如何に関わらず非正規社員の多くは短期間での有期雇用期間を繰り返す場合が多いです。
その場合でも、休職期間中も雇用契約自体は継続していますので、無期転換ルールに従い、通算雇用期間が5年超の時点で無期雇用の申し込みを行うことが考えられます。これは必ず休職事由消滅後に復職を保障するものでは有りませんが、復職前に雇止めとされることを否定することになります。
6-4.復職をめぐる最近の紛争や復職可否の判断について
・復職について「独立行政法人 労働政策研究・研修機構」が平成25年におこなった調査では病気により休職した社員の復職率は平均5割とされています。もちろん病気の種類や各事情背景、職場と家族の環境等の様々が推測されます。
ただし、いったん休職に入ると職場復帰への意欲の維持や周囲からの支援の有無で諦める場合も出てくるのが実状です。出来れば休職を求める前に事前に周囲とも検討したうえで休職を考えることが望まれます。
・最近では昨今の職場におけるパワハラ問題を起因とする紛争から精神的な疾病により休職を余儀なくされるケースが多くあります。
・また就業規則が設置されていても、短期の休職期間(例えば1か月)で復職出来ないとすれば、自然退職は労基法(第20条)との兼ね合いから使用者には合理性が認められないと思われます。1か月を超えての休職期間満了での自然退職としても、解雇権の濫用(労働契約法大16条)との関係で使用者が責任を問われる可能性があります。
・以上からすべての事例が一律に判断されるわけではなく、個別の具体的事情を見た上で判断されることになります。
ただし、いったん休職に入ると職場復帰への意欲の維持や周囲からの支援の有無で諦める場合も出てくるのが実状です。出来れば休職を求める前に事前に周囲とも検討したうえで休職を考えることが望まれます。
・最近では昨今の職場におけるパワハラ問題を起因とする紛争から精神的な疾病により休職を余儀なくされるケースが多くあります。
・また就業規則が設置されていても、短期の休職期間(例えば1か月)で復職出来ないとすれば、自然退職は労基法(第20条)との兼ね合いから使用者には合理性が認められないと思われます。1か月を超えての休職期間満了での自然退職としても、解雇権の濫用(労働契約法大16条)との関係で使用者が責任を問われる可能性があります。
・以上からすべての事例が一律に判断されるわけではなく、個別の具体的事情を見た上で判断されることになります。
7.障害年金受給の可能性について
・私傷病による病気、怪我で休職しその後の復職が出来ない場合で「労働に著しい支障がある」、または「日常生活に著しい支障がある」場合には障害年金受給の可能性があります。
その場合に初診日、保険料納付要件、認定基準などの必要要件を満たす必要があることに変わりません。
・また傷病手当金(健康保険)との二重受給は出来ない、労災保険や他の年金制度との調整が行われるなどの複雑な仕組みはあります。
その場合に初診日、保険料納付要件、認定基準などの必要要件を満たす必要があることに変わりません。
・また傷病手当金(健康保険)との二重受給は出来ない、労災保険や他の年金制度との調整が行われるなどの複雑な仕組みはあります。
8.ご相談窓口
傷病による休職と復職についてのご相談は、各都道府県労働局においては、局または監督署に置かれている総合労働相談コーナーでも対応されています。もちろん、相談は無料です。
また、休職、復職のご相談に加え、障害年金について、労務の専門家でもある社会保険労務士にご相談いただくことも可能ですので、ご検討ください。
また、休職、復職のご相談に加え、障害年金について、労務の専門家でもある社会保険労務士にご相談いただくことも可能ですので、ご検討ください。