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「障害年金」とは ~初級編~

「障害年金」をはじめて知った時に読んでいただけるように、わかりやすくまとめました。

1.障害年金は、公的年金の中のひとつ

年金
日本の公的年金の給付には、老齢・障害・遺族の3種類があります。
公的年金は、20歳から納付が始まる身近な大事な制度となります。
高齢になった時に支給される「老齢年金」が一般によく知られていますが、
もし事故に遭いまた病気にかかり障害状態に陥ってしまった場合には「障害年金」が、家族の中の生計を担う大黒柱が死亡された場合には「遺族年金」が支給される仕組みです。
いずれの年金も現役世代が支える制度が基本となっています。
もう少し詳しく説明しますと

(1)老齢年金とは

高齢になり退職されるなどで所得が低下した際の支えとして支給されます。
老後になり、それまでに一定期間の年金保険料を納めた方が老齢基礎年金を受給できます。
また厚生年金などに加入していた人は、それに上乗せする形で老齢厚生年金を受給できます。なお年金額は保険料を納付した期間などにより決定されます。

(2)障害年金とは

事故や病気で障害を負った場合の生活支えとして支給されます。
障害基礎年金は1,2級。障害厚生年金は1,2,3級および障害手当金があります。
障害等級により年金額が決まってきます。
また、年金納付の始まる二十歳より前で発生した障害も対象となります。

(3)遺族年金とは

一家の大黒柱というべき働き手が亡くなった場合に、残された家族の生活安定のために支給されるのが遺族年金です。
遺族基礎年金は定額支給ですが、遺族厚生年金は亡くなられた方が保険料を納めた際の報酬等により決定されます。

2.年金は受給者が請求しないと給付が始まらない制度
~請求手続きするタイミングはどうやって知るのか?~

年金の請求手続き
年金制度は、老齢、障害、遺族の3つとお話ししました。この3つの年金制度に共通する最大の特徴は、「(給付される本人が)請求の手続きを行わなければならない」ということがあります。
市役所から来る選挙のお知らせの葉書みたいに、年金事務所から自動的にあなたは受給できますよと教えてくれるものではありません。
その上、請求手続きを忘れた、また後で気付いても、後追いで受給できないこともあるので、大変重要です。

「請求手続きするタイミングはどうやって知るのか?」というと
一般的には次のような場合が考えられます。

(1)老齢年金の場合

「年金定期便」などでお知らせが郵送され、同年代の人も同じ時期に老齢年金の請求することになるので、入ってくる情報も豊富です。

(2)遺族年金の場合

亡くなった方のご遺族は市役所等で色々なお悔やみの手続きを必ず行います。手続きの流れの中で、遺族年金の情報を知ることができます。

(3)障害年金の場合

病院、リハビリ等の担当者、友人などから「障害年金」のことを聞くことはあります。また、自分でネット情報を検索はできます。
しかし、次のような理由で、請求漏れ、請求遅れが発生しやすい年金制度です。
・実際に障害年金が受給出来るか等のどうか、人により障害の種類や度合いが違うので単純な比較もできません。
・請求手続きも、障害の種類や度合いにより、異なるため、請求手続きが煩雑難解になります。

(4)まとめ

老齢年金・遺族年金の二つは、適切な時期に行われるのが大半で、請求忘れの可能性は少ないと考えられます。それらに比べ、障害年金は、請求漏れ、請求遅れが発生しやすい年金制度です。では、請求が遅れると、どうなるのでしょうか。
例えば、障害基礎年金2級の場合は、1か月手続きが遅れると約6万5千円を失います。半年で約40万円、1年で約80万円の損失となります。
 
障害年金の支給開始時期は、「請求した月」で決まります。
そのため、一日でも早く請求書類を整え、提出することをお勧めします。

3.障害年金の受給者の割合について
~あなたは生涯年金の支給対象に該当しますか?~

対象と対象外
「障害年金を受給できている人はどれくらいだろうか?」という障害年金の受給者の割合についてです。
令和元年の厚労省資料によると、障害者手帳を受けている方は約964万人、同じく障害年金を受給されている方は215万人ほどです。ひとりの方が複数の障害手帳を保持の場合もありますが、単純に計算すれば、傷害手帳保持者のおよそ2割の方しか障害年金を受給されていないのが現状です。この数値から、「障害年金を受給可能なのに、申請していないために、受給出来ていない方が多いのではないか?」と考えられます。
障害年金を受給できるかどうか考えたことのない方は、一度検討されてはどうでしょうか?

4.障害年金請求のできるのはどんな傷病か

笑顔
障害年金は、年金加入中の病気やケガによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に、現役世代の方も含めて請求することができます。

障害年金の対象となる病気やケガは、手足の障害などの外部障害のほか、精神障害やがん、糖尿病などの内部障害も対象になります。
病気やケガの主なものは次のとおりです。 
当デスクのHPの「受給事例」にも掲載しています。

受給事例|【大阪府枚方市】京阪障害年金サポートデスク (keihan-shogai.com)

(1)外部障害

眼、聴覚、肢体(手足など)の障害など

(2)内部障害

呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど

(3)精神障害

統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など

5.障害年金が世間に知られていない制度である原因は?

困った(>_
障害年金は、すべての年代の国民全員にとって、非常に身近な社会保障制度といいました。しかし、老齢年金や遺族年金の認知度に比べ、障害年金は、あまり知られていません。
実際に、自分やご家族、知人、同僚が何らかの障害に該当することになり、初めて障害年金について調べたという方が多いようです。

(1)障害年金についての国民への国の周知の不足

1つ目の原因は、国の周知の不足だと思います。
すべての法律を知ることが出来ないように、障害年金の制度を知らないのは同じかもしれません。でも、できれば障害年金を含む社会保険制度のことは、義務教育段階でももっと積極的に教えるべきでしょう。
できれば、社会保険の他に労働法(労働基準法など)についても、社会に出る前、就職前にその基本だけでも知ることは、役に立つと思います。
例えば、近年、特に増えているのが、仕事の現場で頑張り過ぎて、メンタルでダウン、そしてうつ病等が重篤となる方です。
うつ病も障害年金の対象となる傷病です。
そんなとき、事前に障害年金の知識が少しでもあれば、きっと不安や悩みの解決にもつながると思います。

(2)障害年金請求の手続きの複雑さ

2つ目の原因は「障害年金請求の手続きの複雑さ」です。
「自分で傷害年金請求の手続きをしようとしました。でも、専門用語の難解さ、と医療機関など関係機関との往復で疲弊してしまった」と、ご相談に来られた方からお聞きすることが多々あります。
年金事務所では書類による確認も一つ一つ確認しながら進められるため、何度も通うことになります。病院の初診日の証明が適切でないなどで、病院にも何度も通うこともあります。
そのため、目には見えない、多くの時間というコストは発生(消費)します。

ただでさえ病気、怪我などを抱えている方やご家族にとって、障害年年金の請求手続き作業は、更に精神的、肉体的、(時間や金銭的にも)疲弊させます。そのため、途中であきらめるケースが多々あります。

6.障害認定基準と障害等級について

4つ
障害年金の対象となる障害状態に該当するかは、下記の厚生労働省のHPの「国民年金・厚生年金保険障害認定基準」を掲載されています。

国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

(1)1級

「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものとする」とあります。
これをもう少し分かりやすく言い直すと、「誰か自分以外の他人の介助を得なければ、ほぼ自分の用事を済ませることが出来ない様な状態」です。
具体的には、身の周りのことはかろうじて出来たとしても、それ以上の活動が出来ない、又は行ってはいけないとされる状態です。生活面では活動範囲がほとんどベッド周辺に限られる状態とされます。

(2)2級

「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必用とする程度のものとする。」とあります。
 これは、「必ずしも他人の助けを借りる必要はないけれど、日常生活は極めて困難であり、労働により収入を得ることが出来ない状態」を意味します。
具体的には、家庭内のごく簡単な活動のようなもの(軽食作り、簡単な掃除、下着程度の洗濯など)は出来るが、それ以上は出来ていない、又は行ってはいけない様な状態を示します。活動範囲とすれば、入院時ではほぼ病棟内に限定される状態、家庭にあっては活動範囲がほぼ家屋内に限られる状態とされます。

(3)3級

「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のものとする。また「傷病が治らないもの」にあっては、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。」とあります。
 これは、傷病が治らず、労働に著しい制限を受ける、もしくは労働に著しい制限を加えることを必要とする状態とされます。
※3級は、障害厚生年金の対象者のみにある級になります。障害基礎年金にはありません。

(4)障害手当金

「『傷病が治ったもの』であり、労働が制限を受けるかまたは労働に制限を加えることを必要とする程度のものとする。」とあります。
 これは、「症状が固定していて、3級よりやや軽度の障害が残った状態」を意味します。
※障害手当金は、障害厚生年金の対象者のみにある制度になります。障害基礎年金にはありません。

(5)まとめ  ~障害年金の認定基準の曖昧さと推定の難しさ~

このように各級の障害の目安は明記されているのですが、はっきりと区切りがされているわけではありません。
障害年金に多く関わったことのある医師でも社労士でも、その方の症状からどの等級に該当するかを、事前に何級か推定することは簡単ではありません。
「何級に該当するか?」これは請求してみないと確定できません。実際に裁定請求を行い、決定通知書が送付されて来た時に初めて、障害年金の支給や等級が確定します。

このことを知らずに請求を行い、不支給通知が届いてから初めて障害年金請求の難しさを感じる方が実に多いです。
更に付け加えると、「基準をとらえた上で、医師に的確な診断書を作成してもらうこと」が何よりも支給決定につなげるための重要な作業となります。それが障害年金のプロである社労士の仕事です。

7.まとめ
~未来に明るさを求めるお手伝いを~

手と緑の葉
障害年金の受給の可能性があるのに、請求をしていない人(請求できることに気が付いていない人)が多く、また、気が付いていても請求手続きの煩雑さからあきらめてしまう人が多い現状は、本当に残念なことだと思います。
私のもとにご相談に来られるかたの多くは、その障害のため、生活に支障の出ている方です。その方たちが障害年金を受給でき、未来に少しでも明るさをもってもらいたいと、日々感じています。
ご自身のご病気やお怪我で日々いっぱいの状態とはお察ししますが、そこから一歩前に踏み出して、障害年金の請求に踏み出してください。また、その複雑、煩雑な障害年金請求のプロとして、社会保険労務士がいることも頭の片隅に置いていただければと思います。

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